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『東西思想の超克』再説  第１回　古代の精神革命

　　　ミレトスの自然学とエレアの存在論・プラトン・アリストテレス・ウパニシャッド・釈迦・殷周革命と天の思想・孔子・老子・荘子

 

序

　　科学を基礎とする近代合理主義による超感覚的実在界の否定

　　二つの存在領域に対応する人間の意識、認識能力の二つのあり方

　　超感覚界から自己を遮断し感覚界に自己閉鎖的になった現代の人間

　　「哲学する」という実践による感覚界から超感覚界への超脱

　　生滅無常の存在者の絶対的「根源」を求める哲学、宗教

　　「有無のパラドックス」「有無の矛盾」に無自覚な近代合理主義

　　無限絶対の実在に至る途を断たれた現代の人間の閉塞状況と哲学の課題

　　実在・実存体験という基体から切り離され固定化された哲学の現状

　　神話、呪術の克服による「哲学する」ことの開始

　　人間が自覚的行為によって超感覚的な力を制御し「本来的自己」を実現する

　　全人類が「本来的自己」を実現する途を拓き示した古代の偉大な思想家たち

　　人類の思想的地盤を形成してきた哲学的言説、宗教的教説の伝統

　　「科学革命」による合理主義的な自然認識の形成と形而上学、神学の排除

　　自然生態環境・人間・社会文化環境のあいだの深刻な対立・相剋

　　超感覚界から噴出してくる無限衝動に駆り立てられる人間

　　近代科学技術文明の全地球的な拡大と全人類的な思想的地盤の喪失

　　「文明化した未開」ともいうべき現代における哲学の根本的課題

　　東西の思想的伝統の統合による「世界哲学」の形成

古代の精神革命

　ギリシャ

　　ミレトス学派の自然学、エレア学派の存在論

　　　ギリシャにおける神話的思惟の克服と哲学の形成

　　　生成変化する世界の「根源」の探求と形而上学の始まり

　　プラトン

　　　「死の練習」による感覚界から超感覚界への超脱と「善のイデア」の体験

　　　イデアの統一連関を映し出すコスモス（宇宙・秩序）

　　　哲学的問答法によると善のイデアへの遡源

　　　全人類に無限絶対の実在へ至る途を示すプラトンの哲学

　　アリストテレス

　　　宇宙万物の運動の究極目的としての「不動の動者」

　　　人間の認識能力の最頂点である能動的知性

　　　全宇宙が自己を自覚し、神の永遠性に参与する場所である人間の魂

　　　観想的生活による神の永遠性への参与

　　　全実在界大の実在・実存体験のロゴス化としての形而上学

　　　アリストテレスの形而上学の現代的再生の方向性

　インド　

　　ウパニシャッドの哲学

　　　万物の根本原理であるブラフマンと個人の根本原理であるアートマン

　　　感覚界から超感覚界への超脱とブラフマンとの合一

　　釈迦

　　　「我執」を原因とする生死からの脱却を目的とする仏教

　　　瞑想によるダンマとの合一という「涅槃」への到達

　　　釈迦におけるダンマ（いかなる形態をも超えた純粋生命）の体験

　　　縁起の理法の自覚と「我執」にとらわれた生き方の克服

　　　絶対無の形而上学の伝統の原点としての釈迦の思想の現代的再生

　中国

　　殷周革命と天の思想

　　　神話、呪術からの脱却と「帝」から「天」への移行

　　　祈りによる無限の創造的エネルギー・生命との一体化

　　孔子

　　　孔子における天との合一体験としての「仁」

　　　「克己復礼」の実践による「仁」の実現

　　　天と合一した自己は、同時に万物万人と合一する

　　　「本来的自己」の実現を目的とする孔子の祈り

　　　「天」から離れた時代としての現代に甦る孔子の思想

　　老子

　　　「樸に復帰す」「嬰児に復帰す」という主体的実践

　　　自己否定を経て自己本来のあり方に帰る

　　　高次の知である「無知（明））」による道の体得・体認

　　　道から生み出された万物が道に復帰する運動と一体化した自己

　　　現代の人間に対して全人格的転換の方向を示す老子の思想

　　荘子

　　　万物の生成変化を超越し、それを支える「道」という実在

　　　生死をその根源の「道」から見ることのできない通常の知の限界

　　　「坐忘」により超感覚界に超脱し、「真知」により道の働きと一体化する

　　　「万物斉同」の境地に立つ「至人」「聖人」の自由自在な行為

　　　自然的個物・人間的個人・文化的個物の対立、相剋を克服する万物斉同の思想

 

『東西思想の超克』再説  第２回　古代の東西の形而上学

　　　プロティノスの形而上学・華厳の形而上学

プロティノスの形而上学

　　プラトン、アリストテレスの哲学を超えたプロティノスの哲学

　　一者からの流出による叡知界、霊魂の世界、感覚界の形成

　　万物が一者から出て一者へ帰る運動と一体化した人間

　　霊魂の肉体からの解放と一者への上昇

　　人間が感覚界を超脱し一者との合一に至る道

　　一者からの流出と一体化して人間が感覚界へ戻る道

　　プロティノス哲学の不徹底性とその克服

　　現代に甦るプロティノスの絶対無の形而上学

華厳の形而上学

　　ダンマとの合一体験にもとづく釈迦の思想を継承した華厳の思想

　　『華厳経』のヴィルシャナ仏と蓮華蔵世界と衆生界

　　衆生に対する如来の働きかけを媒介する仲保者

　　すべての人間の大乗菩薩行の模範としての普賢菩薩

　　すべての個物が相即相入的に調和する蓮華蔵世界

　　ヴィルシャナ仏と合一し覚者（フッダ）となった人間

　　衆生界に対する配慮を欠落させた華厳経の限界

　　現代におけるすべての個物・個人の相互調和と『華厳経』

 

『東西思想の超克』再説  第３回　世界宗教と形而上学

　　　イエスの宗教・パウロの神学・ヨハネの神学・龍樹の中観哲学・ 龍樹の中観哲学

イエスの宗教

　　全人類を罪からの救済に導くイエスの宗教思想

　　プネウマの直接経験によるイエスの全人格的転換

　　人間のプネウマへの背反、人間と神の敵対関係

　　イエスの悔い改めの呼びかけと神の支配への服従

　　すべての人間の「模範」としてのイエスと本来的自己実現

　　死滅の危機に直面した人類を救済するイエスの宗教思想

パウロの神学

　　イエスの弟子たちにおける「復活したイエス」の顕現体験

　　宗教的経験としての顕現体験の本質的意義

　　イエスを通じて神の垂直的な働きと一体とした人間

　　パウロの顕現体験と回心=根源的な存在転換

　　万物を創造する神の働きの「仲保者」としてのキリスト

　　キリストの受肉とイエスの死・復活、神と人間の和解

　　神のプネウマによって結びつけられた万物万人の共同体

ヨハネの神学

　　 絶対に断絶する神と人間を結合する「イエス・キリスト」

　　「まことに神・まことに人」としての「受肉したロゴス」

　　イエスの死・復活による神と人間の敵対関係の克服 す

　　べての人間にとっての「模範」としてのイエス

龍樹の中観哲学

　　「成道の釈迦」が「説法の釈迦」になったことと大乗仏教

　　釈迦の無我説、『般若経』の空思想を継承する龍樹の空概念

　　龍樹思想の根本的立場である「空即縁起」

　　「戯論」の止滅による空、縁起・無自性の体得

　　大乗菩薩行を基礎づける「空即縁起」という論理

　　「空即縁起」と「勝義諦即世俗諦」の一体性

　　「空即縁起」の論理を体現した人間と万物万人の一体化

龍樹の中観哲学

　　中観哲学の「二諦説」から唯識哲学の「三性説」へ

　　円成実性、依他起性、遍計所執性の相互関係

　　八識（アーラヤ識、マナ識、意識、前五識）三層構造

　　「転識得智」による「八識」の「四智」への転換

　　覚者の空性→空用→空義と衆生の空義→空用→空性

　　三身（自性身、受用身、変化身）の相互関係

　　仏であると同時に人間である存在としての「菩薩」の働き

　　アーラヤ識の転換による現代の人間中心主義の克服　

 

『東西思想の超克』再説  第4回　古代、東西それぞれにおける思想の融合

　　　　アウグスティヌス・中国華厳・天台

 

アウグスティヌス――ギリシャ哲学とキリスト教の融合　

　アウグスティヌスにおけるギリシャ哲学とキリスト教の融合

　人間の選択の自由と善性である神へ向かう道

　究極目的である神に向かってのアウグスティヌスの上昇体験

　人間が神へ至る「理性の途」と「権威の途」

　アウグスティヌスにおける神と神性の区別の不徹底

　人類が死滅の危機に面した現代に甦るアウグスティヌスの思想

中国華厳――『華厳経』と『荘子』の融合

　インド仏教と中国の伝統思想の根源的融合

　『華厳経』と『荘子』の融合による中国華厳の形成

　華厳宗の開祖杜順の「真空観」「理事無礙観」「周遍含容観」

　不可分一体的な関係にある性起と縁起(一即多・多即一)

　「海印三昧」と「華厳三昧」という観想意識に映し出される真実相

　澄観の「事法界」「理法界」「理事無礙法界」「事事無礙法界」

天台――『法華経』の中国化

　『法華経』の独自の解釈による天台宗の成立と天台哲学の形成

　天台智�擇痢崕床焼�空観」「従空入仮観」「中道第一義諦観」

　「円融三諦」・「一心三観」と究極的な全人格完成の境地

　全体と個物の円融相即を説く智�擇痢岼貲飴粟蕁廚了彖�

 

『東西思想の超克』再説  第５回　中世、東西それぞれにおける形而上学体系の構築

　　　トマス・アクィナス・朱子・王陽明

 

トマス・アクィナス――キリスト教神学とアリストテレス形而上学の総合

　実在・実存体験を基盤とするトマス・アクィナスの神学・形而上学

　すべての被造物の神に向かう運動が人間において自覚的となる

　神の恩寵の受容による人間の究極目的への到達

　知性の「抽象」の働きによる事物の本質の把握

　知性による存在そのものの体験である「能動的知性の光」

　トマスの「存在」を「有」を超える「絶対無」と規定する可能性

　全実在界大の本来的自己と形而上学的神学の全体知

　科学と形而上学の統合という現代的課題とトマス・アクィナス

朱子――古代以来の東洋思想を相統合した体系

　孔子を継承した孟子の思想における人間の「善なる性」と物欲

　孟子の思想の全体を形而上学体系として再構成する

　実在・実存体験を基盤として仏教・道教と対決した宋代の儒学者

　朱子学における太極と万物の「体用」・「理一分殊」の関係

　「気質の性」を克服して「本然の性」にたちかえる「居敬窮理」という実践

　「豁然貫通」によって多様な理の本体である一理に超越・合一する

　太極と合一し、万物と一体となる全実在界大の本来的自己

　現代の危機を克服するものとして甦る朱子の思想

王陽明――明代における儒学の再興

　静坐という実践によって「本来的自己」を実現した王陽明

　良知体験を基盤とする形而上学としての陽明学

　心の本体である「良知」が規範を定立し、意志を規定する

　対象にかかわる意志のあり方を正す「格物」

　「明明徳」と「親民」による「万物一体の仁」の実現

　王陽明の形而上学を生活の場の実践と結びつける

 

 『東西思想の超克』再説　第6回　中世、東西それぞれにおける絶対無の形而上学

　　　　マイスター・エックハルト・道元 ・親鸞 ・イスラーム哲学

 

マイスター・エックハルト――神性と人間との呼応関係による本来的自己の実現

　西洋の伝統的形而上学を超えるエックハルトの絶対無の形而上学

　知性の内的認識を覆い隠す感覚・理性の外的認識

　神の働きとしての「恩寵」と人間の働きとしての「離脱」の一体化

　「突破」による神性との合一「神の根底は私の根底であり、私の根底は神の根底である」

　時間と永遠を相即させる主体である「一人」・「真人」

　神性の宇宙論的運動と一体化したエックハルトの実在・実存体験

　感覚界から超感覚的実在界への転換という現代的課題とエックハルトの思想

道元――仏性と人間との呼応関係による本来的自己の実現

　「我執」・「煩悩」の克服を根本課題とする道元思想の現代的可能性

　道元における全人格的転換の体験である「身心脱落」

　仏性と自覚的に一体化する「只管打坐」という実践

　仏性の自己限定によって有（存在）と時（時間）が生起する

　時間・空間的な広がりのあらゆるところを実践の場とする本来的自己

　前後際断した絶対生と絶対滅を非連続の連続的に継起させてゆく自己

　自然的個物・人間的個人・文化的個物の調和という課題と道元思想

親鸞――無上仏と人間との呼応関係による本来的自己の実現

　親鸞における永遠無限絶対の実在としての真如・無上仏

　真如・無上仏との合一としての親鸞の実在・実存体験

　無明・煩悩具足の凡夫の現代的形態としての無限衝動に駆り立てられる人間

　仏と人間の「仲保者」としての浄土・阿弥陀仏

　人間を無上仏に向かわせる阿弥陀仏の働きかけ

　無上仏・阿弥陀仏との合一と無明・我執・生死・煩悩からの脱却

　親鸞の回心の体験としての「三願転入」

　親鸞の信体験と現代人の全人格的転換

イスラーム哲学――ハッラージュ、アヴィセンナ、スフラワルディー、イブン・アラビー

　スーフィズムとスコラ哲学を総合したイスラームの神秘主義的哲学

　唯一なる神との合一のためのスーフィズムの実践

　ハッラージュの「われこそは神」「神性と人性との合一融合」

　プロティノスの合一体験を超えるスーフィズムの合一体験

　プロティノスの流出論を継承するアヴィセンナの創造論

　スーフィズムとスコラ哲学との本質構造的結合点

　スフラワルディーの形而上学における階層区分

　「東方神智学」における人間霊魂の下向と還帰

　あらゆる存在者として顕現するイブン・アラビーの「純粋存在」

　「有無中道の実在」の原型を映す感覚界の事物

　「純粋存在」の発出と還帰による不断の創造

　全実在界の真実相をとらえる本来的自己の観想意識

　自由・平等・博愛を根源的に根拠づけるイスラーム思想

　

第１回論文の序より

　永遠である無限絶対の実在と人間の合一という東西思想の究極的な共通基盤から人類の思想の全伝統を見るとき、すべての哲学は永遠の真理として同時的となり、現代のうちに甦る。ヤスパースのいうように、二千数百年にわたる哲学史の全体が、唯一の現在、人間の自覚の一大瞬間のようなものになるのである。それが、現代において東西の思想を統合した世界哲学を形成するということにほかならない。 

第７回以降の概略

第７回　西洋近代

第８回　現代哲学への転換

第９回　現代哲学

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